【ネタバレあり】「シン・仮面ライダー」辛口感想・レビュー。「エンターテイメント作品」ではなく「監督個人がやりたい事」なのでは?

2024年2月14日

シン・仮面ライダー、観てきました。
ネタバレありの記事です。
 

まず始めに

私は庵野監督作品が大好きで、当ブログにも幾つもの記事を書いています。
エヴァはもちろん、ゴジラ、ウルトラマンは原作を子供のときに見ていたこともあり、シンゴジラ、シンウルトラマンは本当に楽しめました。
シンゴジラは人生で一番好きな映画作品です。

一方、仮面ライダーについてはブラック、RXは見ていましたが(内容はほとんど覚えてない)、初代、漫画などは見ていなく、ライダーキック、本郷猛、一文字隼人の名前を知っている程度です。
今回シン・仮面ライダーを観るにあたって、原作を履修するか迷いましたが、敢えて行わないことにしました。

以下、感想・レビューを書いていきますが、今回は忖度抜きで辛口です。
ネガティブ意見も多いため、気分を害したくない方は読まないことをオススメしますm(__)m

もちろんこれは私一個人の感想ですので、皆さんは最終的に自分で観て感じたものを大切にしてください。
 

この作品「監督個人がやりたいこと」では…?

パンフレットに庵野監督のコメントがあり、「自分個人がやりたい事ではなく、作品が面白くなる方が重要だと思っています」との主旨が書かれています。
(最近の庵野監督が関わる映画のパンフレットにも同様に書かれていることが多いですね。)

ただ、今回のシン仮面ライダーは個人的には「そうかなぁ…?」と疑問を感じてしまいます。

シンゴジラ、シンウルトラマンは「作品が面白くなるため」と「庵野監督のやりたいこと」上手くハマって、見事面白い作品になっていました(個人の感想です)。

ただし、今作は庵野監督の仮面ライダーの想いが強すぎるのか、マニアック過ぎる作品になってしまったと思います。
 

では以下、個人的に作品で良かった・そうでなかった点を列挙していきます。
 

良かったところ

デザイン

特にライダーのメットのデザインが初代を踏襲しつつも現代的に洗練されていてカッコイイですね。
オーグやセットのビジュアルも現代風に洗練され、スタイリッシュな独特のデザインが美しかったですね。
 

映像

さすが庵野監督、アクションシーンは見ていて気持ちが良いカット割りやシーンでした。
ジャンプしてからの宙返りやサイクロン号の変形やバイクシーンなどもカッコ良かったです。

シンウルトラマンでも庵野総監督で見たかったとつい思ってしまいましたw
 

2号のキャラクター

全般的にダークで暗い作品ですが、一文字隼人の自由とした飄々としたキャラが良かったですね。
 

ヒロインの浜辺美波さんが美しい

美人で素敵でした。
 

良くなかったところ

映像

後半、折角の2号との共闘シーンが暗すぎてよく分かりませんでした。
 

・後半、2号との工場での戦闘シーン、ドラゴンボールのように空中や建物を飛び交いますが、妙なCG感でモーションなどが中途半端に見えてしまいました。
今までの庵野監督作品でも「敢えてクオリティが低く見える演出は監督が意図してやってるのではないか?」とのことで話題にもなりますが、もはや毎回そのように思わせる表現もどうなのかなと思いました。

・シンエヴァ同様「宇部」での撮影も行っているようです。
またしても宇部である必要はあるのでしょうか…監督個人がやりたいことのように感じられました。

・個々のシーンで「監督がやりたい映像表現」は分かるし良い部分もあるんだけど、「全体の一本の映画」としてみると、個々をつぎはぎにしたように見える感じも受けました。
これは30分番組の幾つかの話数を1本の映画にした場合のことでシンウルトラマンも同様のケースに当てはまるのですが、今回は特に全体のストーリー性や視聴者の心理誘導よりも、「監督が見せたいシーン」で構成されているように感じました。
 

・後述しますが、脚本や心理描写が薄いので、世界観や衣装やセットのデザインが良い反面、悪目立ちしている印象も受けてしまいました。
 

脚本・演技

・これもまた庵野節ですが、主人公がエヴァのシンジ君同様、戦うことに迷いがある設定。
エヴァも終わり、シンウルトラマンも終わった中、まだそのヒーロー像を続けるのかと感じてしまいました…。
しかし、昭和の燃えるヒーロー像ではなく、弱さや優しさを兼ね備えた主人公は庵野監督らしいので良しとしても、演技指導なのか俳優さんの演技が原因なのか、全体的に登場人物の心情があまり伝わってきませんでした…。

この点、パンフレットの池松さんのインタビューに「演技の指示は少なく、お任せ、ただ画作りに関してはとことん指示を出す」と書かれています。
なるほど、原因が理解できました。

まあ比べると特にシンゴジラは群像劇で、リアリティ重視、登場人物の心理描写に重きを持ってきていないので、監督の狙いと画作りの得意分野が上手くハマったと思いますが、今作では登場人物の心理描写がちょっと共感しにくい表現に感じました。

この辺りは特撮やメカや爆発、前衛的な映像演出が得意だからこその庵野監督の得手不得手があるのでしょうけど、一般の感動系・泣ける・普通の映画やドラマと比べると、どうしても登場人物の心理描写が希薄に感じられてしまいました…。

・PG12ということで、血の表現、最初はインパクトあります。
序盤は静かに始まるのではなく、ダイナミックにバイクシーンでBGMも流れ、インパクトや勢いがありますが、その後クモオーガ戦の後、ドラマはどんどん失速していく感じを受けました。
そもそもPG12にするほどの流血表現いる…?とも。

・オーグの最終目的が人類補完計画的な内容でこちらも「またか」感が否めませんでした…。
 

エンドロール

過去作の歌が3曲流れますが、「これらを聴かせたい」という思いが前面に出ていてるのか、歌も中途半端に終わってて次の曲がかかるのに違和感がありました。
 

プロモーション

映画本編と関係ありませんが、宣伝・プロモーションのお話です。

総宣伝監修は庵野監督でクレジットされています。
確かシンエヴァ、シンウルトラマンも総宣伝監修が庵野監督だった記憶ですが、シンエヴァ辺りから露骨な売上重視なプロモーションに感じられています。

某握手会商法かと思う程、さすがに10回鑑賞はエグいですね…。

シンエヴァでもなんとしても興行100憶行かせるために途中で「シンエヴァの薄い本」も出したり、最近は特典商法が露骨過ぎて引いてしまいます。

また、劇場公開前にフォロワーが多いエヴァ声優陣や関係者を呼んで「面白かった」との宣伝ツイートはステマに感じるので控えてほしいですね…。
監督は「売上が大切」と過去にも語っていましたが、最近は宣伝が露骨に感じます。

ちなみに2023年10月からステマ規制が入るようですね。
 

賛否両論部分

ユニバースの俳優

シンゴジラやシンウルトラマンでも出演された竹野内豊さん、斎藤工さんが登場したのはユニバースとして面白い反面、こちらもやり過ぎに感じました。

また、同様にシンゴジラ、シンウルトラマに出演された手塚とおるさん、長澤まさみさん、塚本晋也さん、松尾スズキさん、市川実日子さんも出演されますが、これらもやり過ぎで「監督のお気に入り俳優だから」に感じてしまいました。
長澤まさみさんのセクハラ的表現もありますが、これも「またか」感が否めませんでした。

2回までは面白いと言えるのですが、3回やられると「またこのパターンか」と個人的に感じちゃいますね…。
せめて3回目では変化球がほしかったところです。

この辺は賛否両論で「面白い」と感じる人もいると思いますが…。
 

総評・まとめ

私はいわゆる庵野監督信者で監督の作品が大好きなのですが、今回はさすがに監督の仮面ライダー愛(しかも石ノ森章太郎原作の方)のエゴ(?)を感じてしまい、本当に観客が楽しめる作品になったのかというと疑問に感じました。

シン仮面ライダーは予算やコロナ禍ということで制作現場も大変だったのでしょうけども、今回は直近の作品によって期待値が上がっていたことを含め、皆が見たかった・期待していた作品像とは違ったものになっていたと感じます。

個人的に
シンゴジラ:100点
シンウルトラマン:80点
とするならば、
シン仮面ライダー:40点

といった感じでしょうか…。
(なお個人的にシンエヴァはアニメ作品であり、「エヴァを終わらせるための作品」と割り切る作品だと思っているので入れていません。)
 

元々庵野作品はそんな一部の人しか理解できないものでは?と言う人もいるかもしれません。

ですが、新劇場版エヴァの所信表明で「誰もが楽しめるエンターテイメント映像を目指します」と言っており、シンゴジラ、シンウルトラマンなど近年の庵野作品はそのようなテーマで作品を作るようになったと思っていたのですが、今回は「監督のやりたい事が入った同人的なマニアック作品」になってしまった印象です。

まあ、もし私が子供のときに仮面ライダーの原作を見ていたら面白いと言っていたかもしれませんが…。
そこがシンゴジラ、シンウルトラマンと比べて、仮面ライダー原作を見ていない私なので、客観的な平等性のあるレビューや判断ができないところですね…。
シンウルトラマンは原作を知っていたので自分は楽しめましたが、原作未見の人からするとイマイチという意見もあるので、今作は一層原作を見てない人からすると厳しい作品というのがが分かると思います。
 

ちなみに今回は樋口監督は関わっていませんね。
思うと、お二方は一緒に組んだ方がバランスが取れて面白い作品ができるような気がしました。

あと補足として、私はこれまでエヴァや色んな作品を見ていて、「原作未見だと楽しめない作品だったり、何回も観ないと面白さが分からない」と言わせるような作品や風潮はもう今の時代は勘弁してほしいと思います。
「原作を知らなくても楽しめる。知っていれば更に楽しめる」が大事だと思います。

今の世の中、サブスクでも沢山の作品が見られるようになったからこそ余計に、まず1度観て面白いかどうか、そしてリピートして観たくなる作品かどうかが重要だと思います。
 
以上、今回は辛口でした。

今作がイマイチに感じた原因

・仮面ライダーの原作、しかもテレビ版ではなく石ノ森章太郎原作を読んでいないと理解できない部分が多いらしい
・元々監督の得意分野は画作りであるし、演技に指示はほとんどしていなかったために心理描写が希薄
・樋口監督不在
・シンシリーズの中では予算が一番少なかったと推測。そりゃ「ゴジラ」「ウルトラマン」「仮面ライダー」のIPを考えれば妥当で、相対的にクオリティが低く見えてしまうのは仕方ない
・シンシリーズ特撮も3作目でマンネリ感もあった
・コロナ過での撮影、制作

かなと思います。
 

まあネガティブ意見が多かったのですけど、プロ野球選手も毎打席ホームランを打てるわけではないので、このようなときもあると思います。
思うと、エヴァ以降、近年ではシンゴジラが大ヒットしただけに、その後の作風や方向性、プロモーションのやり方も変わったような気がしますね…。
 

さて、シンシリーズも今回で区切りが付いたと思うので、次の新しい作品を期待して楽しみにしています。