ゴジラSP<シンギュラポイント>感想。SF設定や脚本で好みが分かれる作品


出典:https://godzilla-sp.jp/
 

アニメ、ゴジラSP<シンギュラポイント>を見ての感想です。
ネタバレありです。

※正確にはタイトルは「ゴジラ S.P」とSとPの間にピリオドが入りますが割愛させていただきます。
 

はじめに

ゴジラSP、世間では賛否両論のようですね。
SF展開が面白い、ジェットジャガーが活躍、過去怪獣が沢山出てくる、話がよく分からない、ゴジラの出番が少ないと言った意見があるようです。

私は昭和からゴジラを見ていて、これまでのゴジラ作品全ての感想を書いていますが、昭和ではモスラ対ゴジラ、平成シリーズ(特にビオランテやデストロイア)、そしてシン・ゴジラが一番大好きです。

私は庵野秀明監督のシンゴジやエヴァも大好きなので、それを踏まえて、個人的な感想や好みとしてお読みいただけたらと思います。
 

PV

 

脚本や設定について

どうしてもエヴァやシンゴジと比べちゃう

全体的にエヴァやシン・ゴジラ、過去ゴジラシリーズの影響やオマージュを大きく感じられました。

ビジュアルとして赤い海や紅塵もエヴァ(特にQ~シン)の既視感が強過ぎて、もうちょっとゴジラSPならではの違う見せ方が欲しかったです。

過去ゴジラシリーズの色んな怪獣登場やオマージュシーンは嬉しい人は多いと思いますが、私個人としてはまずそこよりも「本編をもっとゴジラらしいもの」に注力してほしかったですね。
 

その本編は謎が謎を呼ぶ展開・専門用語をウリとした難解な設定や展開もエヴァっぽい既視感があり、令和の作品としては古さを感じてしまいました。

私はSFモノの設定や脚本ではゲーム・アニメのシュタインズ・ゲートがすごく良くできていると思っているのですが、そうした序盤がラストに影響するような伏線の張り方や展開などにも既視感もあり、ゴジラSPならではの新しさ、オリジナリティをもっと見たかったところです。

特にどうしてもシンゴジと比べてしまう部分があるのですが、シンゴジは以前停滞していたゴジラのブランドを復活させた立役者なので、近年のゴジラ作品の中では比較として外せない作品だと思っています。

シンゴジの庵野監督もテレビプロフェッショナルの出演時に「謎に包まれたままだと置いてかれちゃう」「謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなってきてる」と言っていましたが、まるっきり私も同感で、昔と違って今はそんな「分かりやすさが求められる」時代になったと感じています。
鬼滅の刃の大ヒットやシンエヴァの内容(ある人物の独白)もそういった時代に即した部分かと思うのですが、ゴジラSPはそういった今のトレンドには合っていなく、古い作風に感じてしまったのです。

実際は別に作品が面白ければトレンドに合わせる必要はないのですが、私個人の感性としては、今のご時世でエヴァやシンゴジと似たような作品を見せられることにちょっとお腹いっぱいにも感じたのです。

また、先日、宇多田ヒカルさんのインスタグラムで庵野監督との対談がありましたが、意外にも庵野監督は「まずお客さんが見たいものを作るのが一番、自分がやりたいことはちょっとだけ入れる」「自分がやりたいことを作っても近しい人にも理解されないということは客にも分かってもらえない。作り直しで苦労した」と言っていました。

ゴジラSPは話や専門用語が難しく、シリーズ構成・脚本の円城塔さんのやりたいことが詰まっているのかなと、庵野監督の作りとは逆に感じました。
(「エヴァも難しくて同じじゃないか」と思われがちですがそれは後述。)

まあ、大多数の人は「ゴジラ作品では客はゴジラを見たい」と思うのですが、ゴジラSPの色んな意見を見てみると、作中ゴジラは最後しか出てこない、出番が少ないことに不満がある人も多いようで、私も同感なのです。
平成ゴジラシリーズのプロデューサー、富山省吾さんが言っていましたが、ゴジラ映画を観ている子供は、本編でゴジラが出てこないと飽きちゃうので、数分おきにゴジラを出すようにしていたと言っていました。
※色んなインタビューで言っていたようですが、2014年ゴジラ生誕60周年イベント、ビオランテ上映で大森一樹監督との対談でも言っていた記憶です。

ゴジラSPはネトフリや深夜アニメ放送なので、ターゲット層は小さい子供ではないため、難解な話にしてゴジラを出す頻度は下げるのもアリだと思うのですが、それでも物語全般においてゴジラの出番をもうちょっと多くしてほしかったですね。
序盤、1話ではゴジラの骨が掴みになっているので良いのですが、中盤はちょっとしんどく、そこで色んな怪獣が出てくるわけですが、もっとゴジラに焦点を置いてもらったほうが私は嬉しかったです。

とは言え、脚本では「ゴジラが出現したら”破局が始まる”」のでそう何度も登場させられないわけですが、ではまず、そもそもその設定やプロットがどうなんだろう…と思ってしまったのです。
やはりそこは「肝心の客が見たいゴジラ」をもっと出す設定やプロットが大事だったのかなと感じてしまいました。
そういう意味ではシンゴジのゴジラは序盤・中盤・終盤の登場、そして物語としての意外性やゴジラとしての王道らしさなどプロットが完璧に感じます。

余談ですが、私はゴジラSPを見ている途中、最後でモスラが出てくるのかなと思ったりもしましたがハズレましたw
終盤でモスラの伏線のような蛾の大群が出てきたり、作中何度も出てくるALAPU UPALA(インド民謡)の歌がモスラっぽく、最後そのメロディーがモスラの歌になるのが完成形なのかなと思ったりもしましたが…w
ネトフリで最終回が終わったとき、ツイッターのトレンドで「ビオランテ」が上がっていたようで、テレビ勢の私は最終回でビオランテが出てくるのか?と思ったらそうでもなかったです…w
 

ゴジラの必要性

そもそもになりますが、作品がゴジラである必要性を感じられないことがありました。

初代ゴジラから「ゴジラは核がテーマ」です。

ゴジラに核の設定やテーマがなければ「ただのモンスター」で、ゴジラである必要はありません。
いわばエメゴジ(ハリウッド第1作のゴジラ)と同じです。

ですが、まあそれは「昔からのゴジラ像」という老害の固定観念とも言えるので、今作のゴジラは「破局という新しいゴジラ像」なんでしょうけども。
これまでゴジラにあまり馴染みが無かった人からすれば面白いのかもしれません。

…ただ、昔からのゴジラ好きの自分としてはしっくりこない部分なのでした…😅
 

話の締め、映像作品とは

設定や脚本は好みもありますが、広げた風呂敷を最終話でどう畳むかと思ったら、結局畳んでいないように感じてしまって残念でした。
これまではずっとSF理論やロジックで物語を展開してきたので、最後もそこは一貫してほしかったところです。

先程後述するといった話の難解さについては、エヴァを例に出すと分かりやすいですが、私は話がよく分からなくても映像や絵、演出の強さ、キャラクターの魅力や心情表現が映像作品での醍醐味、面白さだと思っています。
つまり、理屈、ロジックじゃなくて「考えるな、感じるんだ」という情感による面白さ、絵作りこそが映像作品、娯楽作品では重要だと思っています。

アニゴジの感想でも似たようなことを書きましたが、映像作品なので「セリフで長々と映像を説明する」のではなく「ビジュアルで直感的に感じられる」ようにしてほしかったです。

こうして考えると、シンゴジは映像と脚本が絶妙なバランスで作られていたことを改めて実感しました。
 

キャラクターについて


出典:https://godzilla-sp.jp/character/
 

メイがアラレちゃん、ユンが銀さんとよく言われてますが、メイの方はDr.スランプオマージュが入っているのでしょうか…w(科学者)

さて、作中キャラクターは淡々と説明しているだけで、どうも話のラストから逆算した設計図の駒のように感じてしまい、各キャラの個性や感情などを感じられませんでした…。

男女ダブル主人公は面白いと思いますが、二人とも頭が良い設定で、しかも登場人物のほとんどが難しい話をして進んでいくだけに、視聴者が理解できずおいてきぼりになってしまうため、視聴者目線・視聴者が感情移入できる(おバカ的な)キャラクターが欲しかったです。
一応おバカキャラはおやっさんなんでしょうけど、主人公級のキャラでほしかったということですが、ユンの相棒のハベルは肉体派なのに頭も良い設定で長所短所が見えず、個性を感じなかったので存在がもったいない気がしました。

ペロ2はかわいかったですね…!
 

映像や歌、音楽について

怪獣のCG表現の質感やOP、EDの映像や歌、BGMは良かったですね。

 

 

OP、EDの昭和特撮と現代的なカラフルさの融合が良いですね。

ED曲も最終回直前のゴジラSP TV放送も観て、ポルカドットスティングレイの雫さんのコメントも見ましたが、制作コンセプトとして難解な話の後で清涼感あるスッキリした感じが良かったです。
ちなみにトークがめっちゃ面白かったですw
 

劇伴、BGMも良かったですね。
同じくゴジラSP TV放送で沢田完のコメントも見ましたが、伊福部昭さんのような昭和特撮のメロディーが良かったです。
 

総評・まとめ

私はこれまでのゴジラ作品も点数を付けています
ゴジラSPは映像や音は良かったのですが、脚本や設定は私には合わなかったため、点数を付けるなら…35点でしょうか。
(この作品は好みがあると思うので、好きな方はご勘弁くださいm(__)m)

ラストの締めが良かったらもっと面白かったように感じたと思います。
設定や脚本や好みもあると思いますが、ゴジラである理由・必要性を感じられなかったことが一番の理由かなと個人的に感じています。

冒頭、賛否両論と書きましたが、SF設定やロジック、過去怪獣の登場やオマージュが好きな人には好評のようですし、毎回私もゴジラの感想で書いている気がしますが、「色んなゴジラがあって良いという意味で、こういうSF展開に特化したゴジラもアリ」なのかなと思います。

一番は今後もゴジラシリーズを続けることに意義があると思いますし、確かに私は私なりの好きなゴジラ像はありますけど、その同じことばかりやっていてもファンは増えませんし、新しい挑戦は大事だと思います。
 

ラストで二期をするかもしれない匂わせがありました。
個人的にはロジックだけではなく、もうちょっと視聴者目線に寄り添った設定や脚本、映像や情感に訴えたバランスで物語を見てみたいと思いました。

 
ゴジラvsコングも見て来たので近々感想記事を書こうと思います。