奨学金の返済がいらない新聞奨学生制度を知っていますか?経験者が語るその実態#1

2021年5月30日


 

私のブログ記事ではかなり真面目な内容になります。

奨学金問題で、就職したは良いがその後の返済に困るというニュースを見ます。
特に近年の日本は不景気や増税、低賃金、ブラック企業、非正規雇用が増えているのでなかなか返済が難しいという状況だと思います。

そこで皆さんは新聞奨学生制度をご存知でしょうか?

新聞奨学生制度とは、新聞社が学費の一部もしくは全額を新聞社が肩代わりする代わりに、学生は在学中に新聞配達業務を行うものです。

通常の奨学金制度ですと就職した後に少しずつ返済しなくてはいけませんが、新聞奨学生は返済の必要がなく新聞社が払ってくれるのです。

近年はなかなか景気も悪いですし、また経済的に学費を支払うのが厳しい親御さんは学費の全面免除とは非常に助かる制度だと思います。
 

このように書くと、とても良い制度に思えますが、しかしその新聞奨学生の実態は想像以上に過酷です。
 

私は専門学校に通うため新聞奨学生制度を二度利用しました。
一度目は学業との両立に失敗し、二度目でなんとか成功できたのでした。

もはや何十年前の経験ですが、最近の新聞奨学生のニュースをたまに見ていてもあまりその実態は変わっていないように見受けられるので、幾ばくか参考になるかと思います。

その新聞奨学生制度のメリットとデメリットを私の体験も含めて書いていきます。

なお、記事内容については私の何十年前の体験や知識なので、現在変わっているところがあるかもしれません。
予めご了承ください。
 

新聞奨学生が利用できる東京の新聞会社


 

まずは新聞奨学生制度を利用できる東京での5社を紹介します。

読売新聞
朝日新聞
毎日新聞
産経新聞
日本経済新聞

の5社。
 

東京に限定しているのは私の経験による知識があるためです。
(それ以外の地域についてはお調べください。)

昔と比べインターネットも普及して、新聞も読まれなくなってきている時代ですが、日本での大手新聞5社になります。

その5社が東京都内で新聞奨学生制度を行っています。

それぞれ大きな内容は変わりませんが、微妙に奨学金などが色々違っているのでその点はよくお調べください。
 

新聞奨学生のメリット

学費の返済がいらない

冒頭書いたように、普通の奨学金制度は就職した後に少しずつ返済する必要がありますが、新聞奨学生制度はその返済の必要がありません。
 

家賃もなく、朝夕食事付きで給与もあり


 

新聞販売店に住み込みになり、家賃はかからず無料です。

住む販売店もそれなりに学校に違い場所にしてくれます。
私は電車で学校までドアツードアで30分くらいの販売店でした。
 

更に朝夕食をまかないの方が作ってくれます。

そして、新聞配達の業務を行うことで給与が約8~13万円程支給されます。
(食費は給与から天引きされます)

なお、奨学金や給与は新聞代金の集金あり・なしコースによって変わります。
新聞社によって集金ありしかないところもあったのでそこは調べておくと良いでしょう。

なお、給与は
・集金あり→約13万円
・集金なし→約8万円
だいたい各社これくらいが平均になっていました。

なので、通常の一人暮らしのアルバイトで奨学金制度を利用すると比べると、ずいぶん経済的にお得かは分かると思います。


出典:https://www.nsn-tokyo.jp/
 

就職活動に有利(かもしれない?)

私は就職活動1社目で大手印刷会社(正確にはその兄弟会社の製版部門)に内定しました。
(結局その内定した一社のみで、他は活動、受けませんでした。)

面接でも新聞奨学生をして新聞配達しながら勉強しているというのが面接官に効いたかもしれません。
(それはもちろん面接官によると思いますし、一概には言えませんが…。)
 

新聞奨学生のデメリット

とは言え、その分、その労働や学業との両立は想像以上に過酷です。
 

販売店による当たり外れが大きい


 

先程新聞5社を挙げましたが、新聞社の中の販売店で労働環境に差がある傾向に感じました。

それはその大元の新聞社の売上が販売店に影響されたり、その奨学金制度に対しての力の入れ具合によるものと感じます。

そしてその販売店での店長の経営方針や裁量に左右される部分も大きいからです。
 

販売店によって就業時間、労働内容に差があります。

新聞社は基本的に販売店任せにしているので、その販売店での店長次第で差が出てしまいます。

なので、例えば
・自分の販売店での就業(起床時間)が2時だが、他の販売店では3時という違い
・自分の販売店では勧誘の営業をする必要があるが、他の販売店ではしなくて良い
という違いもあったりします。

これらはたまたま自分が配属された販売店の運次第になります。

なお、販売店での業務内容や環境、待遇の違いを新聞社に掛け合っても、販売店での問題なのでそっちでやってくれと解決には至らないケースが多いのが実状です。

なので、こればかりは運によるとしか言えません。
 

学業との両立が厳しい


 

基本的に朝3時頃起床し、朝刊の配達を6時半頃までに行います。

そして朝食を取り、学校に行きます。

夕刊の配達は15時頃なのでそれまでには帰宅しないといけません。
なので、15時以降の学校の勉強は受けることができません。

そして18~19時頃に夕刊の配達終了です。

また、先程も書いたように、こちらが販売店により異なり、チラシの折り込みや新聞の勧誘といった付帯業務を学生に行わせるか否か変わってきます。
 

その他、集金ありコースを選んだ場合は新聞配達以外に新聞代金を集金する業務があります。

あくまで何十年前の経験ですが、この集金業務がかなり辛いと、自身の体験や周りを見ていて感じました。

単純に新聞配達以外での業務時間が増えるからもあります。
先程も書きましたが、一般的な生活スタイルとして、
・3時起床、朝刊配達
・7時頃朝食
・朝9時頃、通学
・15時頃、帰宅→夕刊配達
・18時頃、夕刊終了
になるので、18時以降に集金業務を行わないといけません。

その間に夕食、シャワー、勉強、3時起床に備えての睡眠(+友人との交流、趣味、休憩)も含めるとどれだけの時間があると思われるでしょうか…。
 

加え、集金でお客さんの家に伺っても留守だった場合、時間が徒労に終わることもあるからです。

一軒家の複数人の家族なら誰かしらいるので、家に伺って払ってもらえる確率は高くなりますが、一人暮らしの会社員の人などが大変です。

一人暮らしの会社員などのお客さんは大抵は日中仕事をしているので、夜遅い時間に集金に行かなければなりません。
そこは予め電話をして、家にいる時間を確認していくのがベストですが、なかなか相手も仕事だったりと電話も出なかったりするケースも多いです。
また、せっかくそういったなかなか不在なお客さんをつかまえても「今はお金が無いのでまた今度来てほしい」と言われたことも何度もありました。

まあ昔に比べ、最近ですと口座引き落とし、クレジット決済が増えている時代なので、実際お客さんの家に行って代金を払ってもらうケースは減っているように思うのですがどうなんでしょうかね。
 

ともあれ、そうした学業もある生活サイクルの中で、その一軒のお客さんの集金のために出かけるのは時間がちょっともったいなく感じるのが実情です。
(もちろん仕事なので当たり前と分かった上で書いています。)
 

このような部分が学業との両立が厳しいところです。

私も集金業務をしたことがありますが本当に大変でした。

なので、私は二度目の新聞奨学生制度を行う際は、集金業務がないコースを選びました。
その分、新聞社が払ってくれる奨学金や毎月の給与も減りますが、そこはその辛さと学業との両立を考えると、絶対私は集金なしコースをオススメします。

それは結局のところ、学業との両立、そして卒業と就職するためが目的なのですから。

新聞奨学生を行うにあたって、さすがに家が経済的に厳しかったり、自立のためにも…と思う人もいるかもしれませんが、その集金ありコースの過酷さを考えた場合、さすがに少しは周りの援助を受けてもバチは当たらないと思うほどです。
それほどまでに過酷でした。
 

学校での交流


 

学校での友人との交流も時間的な制約のため厳しいと思います。

専門学校では新聞奨学生の生徒が多いと専用のクラスも設けてあったりしますが、もちろん無いところもあります。

新聞奨学生専用のクラスですと、新聞奨学生に向けた授業編成があったり、同じ新聞奨学生同士で仲良くなれるチャンスがあります。
これは是非同じ境遇、目的とする仲間なので活かしましょう。
ただ逆を言うと、クラスメイトで学校に来ない生徒も絶対に出てくるので周りに流されかねないデメリットもあります。
 

ちなみに私は二度目の新聞奨学生の挑戦では、新聞奨学生専用のクラスもなく、クラスで私一人のみが新聞奨学生でした。
なので、一人14時半頃に学校を帰ることになりましたし、その境遇を分かってくれるクラスメイトもいなかったのが辛かったですね。
そもそもクラスメイトに話してみても「そもそも新聞奨学生って何?」という感じですし、親が学費を出してくれるのが当然という認識の若い学生が多いので仕方ありません。
 

ともあれ、新聞奨学生はかなり特別な環境であるため、普通のクラスメイトと仲良くなるのも難しいと私は感じました。
特に若さもあったので、何故自分はこんなに苦労しているのに、周りの生徒は親から学費を出してもらいつつ遊んでいるんだろうと恨めしくもありましたね…。
 


 

また、学校や友人との交流やサークル活動、夜遊んだり飲みに行くのも時間的に厳しくなります。
それは朝の起床が3時頃だからです。

では休みの日に遊んだり飲みに行けば良いと思うかもしれませんが、休みは基本的に少ないです。
だいたい
・集金ありコース→4週6日
・集金なしコース→4週4日
でした(おそらく今もあまり変わっていないと思います)。

なので、私が在籍していた販売店でも大学生がいましたが、大学生の場合は想い描くような楽しい大学生活は送れないと言っても良いでしょう。

元々慢性的に睡眠時間が少ない生活の中で、その少ない休みをたまにはちゃんと睡眠を取るか、勉強するか、友人との交流をするか、難しいところです。
 

新聞販売店の人間関係


 

これも販売店によって当たり外れがあります。

まず「専業」と呼ばれる社員の多くの人は、私の経験上、残念ながら新聞奨学生との両立、学校卒業→就職ができなかった人で、そのまま社員になった人が多いように見受けられました。

同じ販売店に住む学生も色々いて、真面目な人普通の人もいれば、学校に行かずに寝てゲームで遊んでばかりの人、学校に行かずに合コンやクラブに行ったり女遊びばかりしてて話も通じないDQN系な人など色々いました。
まさに人種のるつぼです。

普通の仕事でも色々人間関係は難しいものですが、新聞配達・奨学生の現場では面接などもかなり緩いようで、色んな人がたくさんいたわけです。

私自身や周りの人の経験的にも、学生間や社員との人間関係とのトラブルも多かったです。
中には嫌がらせやいじめもあったと聞いています。

残念ながら嫌がらせやいじめもどこの学校や職場でもあるものですが、それでも家に帰れば一時的にそのストレスから解放されるかと思います。

しかし新聞奨学生ですと、そうした人と同じ販売店でずっと同じ屋根を一つにして住み込みしているので気が休まることもありません。
例えばシャワーやトイレ、外出するときやお店の廊下などでもそういった人と遭遇することになります。
度が過ぎると、そういった日常的な時間でも嫌がらせやいじめも受けるといった話も聞いたことがあります。
 


 

また、知り合いの経験談になりますが、新聞代を集めた金額がお店の人から足りないと言われ、実は中抜きされていて、過剰に自腹で払わされていたこともあったと聞きました。
その金額は数万だったらしいです。

集金のお金が足りない場合は自腹になるので、泣く泣く親御さんに連絡してお金を出してもらっていたそうです。
同じ仕事、同じ屋根の下で暮らしている中でそういう嫌がらせなどもあると人間不信になりますよね…。
 

その他、社員の人ですと、残念ながら一般的に仕事に就くのが難しいホームレス寸前な人もいました。

これは私が在籍していたとある新聞店ですが、働いていた社員が仕事が嫌になったのか、なんとお客さんからいただいた新聞代が入った集金バッグを持ち逃げしました。
(結局はお店の人が逃亡したのを見つけたのですが、その後も同じ販売店で仕事を続けさせていました…。)
 

これらは一般的に会社、組織では社員教育や業務のやり方、社風がありますが、販売店によってはそういった健全な組織作りをきちんとできる店長がいないこともあるため、そうした販売店で働く際はストレスが非常に多かったです。

残念ながら、現実的に全うな仕事に就くことが難しい、またはそうした社会経験がない人もいる世界なので、必然的にそうした独善的な世界が構築されやすいと感じました。
なので、現場でトラブルがあり、店長や社員に相談してもそうした上の立場の人自体が全うな人でないケースがあるということです。

そうした販売店でのトラブルや悩み、相談について、販売店に相談しても解決に至らない場合、その新聞社に相談する方法があります。
しかし、やはり販売店独自の方針もあったり、新聞社サイドとしても販売店と余計な面倒事、担当者が自分の仕事を増やしたくない思惑もあったりして、なかなか解決に至らないケースが多いのが実状です。
 

ともあれ、このように店舗によって当たり外れ、差があったりします。
ただ、中にはしっかりしている店舗もあったりするので、そこは配属される販売店の運次第になるわけです。

最近はニュースでブラック企業問題などが取り沙汰されているので、少しは昔に比べて改善されていれば良いのですが、果たしてどうなっているのでしょうか…。
 

その2へ続きます。