シン・ゴジラを見てからのゴジラシリーズ感想。
今回は「ゴジラVSビオランテ」。1989年12月公開。
個人的評価:90点
これまで自分が見たゴジラシリーズの中で一番好きな作品です。そしてこの作品はゴジラファンにも人気の作品で、2014年ゴジラ総選挙で1位を取った作品でもあります。
※現時点視聴していない作品はミレニアム、メガギラス。シン・ゴジラは除く
子供の頃は何回見たか分かりませんし、大人になってからもBlu-rayが欲しい欲しいと思いつつも買ってなかったのですが、この記事を作成中にあまりに欲しくなって買っちゃいましたw
予告
さてさて、それでは個人的にこの作品が面白い5つの魅力を挙げてみます。
※記事はwikipediaも参考にしています
1. 初代ゴジラ(1954)のテーマは「核」、今作は「バイオテクノロジー・遺伝子工学」がテーマ。
元々初代ゴジラのテーマには「人間が生み出した核へのアンチテーゼや警鐘、恐怖」が含まれています。そして今作VSビオランテでは同じように「核に変わるバイオテクノロジー」がテーマとなっています。初代と同様に人間の叡智によって生み出されたテクノロジーへの警鐘、功罪や恐怖、未来を描いているのです。
▲「ゴジラでもビオランテでもない。本当の怪獣はそれを作った人間です。」
初代ゴジラにも通じるテーマです。
また、個人的に作品のテーマには他に「新時代・若者の時代の到来」があると思っています。というのは、作中でも「これからは若い人の時代」という描写もあり、この映画の制作も、まず原案が公募であり、脚本と監督には大森一樹さん、特技監督に川北紘一さん、音楽に「ドラゴンクエストシリーズ」のすぎやまこういちさんを起用するなど、それまでの怪獣映画にない新しい血を取り入れた意欲作でもあるということです。
※なお、公募原案は小林晋一郎さんという『帰ってきたウルトラマン』の第34話「許されざるいのち」の原案でも採用された方です。その話もVSビオランテに通じる部分があるので見てみると面白いかと思います
同様に新時代という意味で東宝作品としてのヒロイン登場の在り方です。
東宝シンデレラ第2回グランプリの小高恵美さんがサブヒロインの三枝未希を演じており、第1回グランプリの沢口靖子さん演じる英理加も登場するのですが、英理加が冒頭に死亡して未希の場面へと移るシーンは、第1回から第2回への女優のバトンタッチを意識した演出となっているそうです。
▲沢口靖子さん。ちなみに1984版ゴジラのヒロインでした。
▲次回以降、平成ゴジラシリーズでレギュラーを務める小高恵美さん。
ちなみに今作は、完成度の高さがゴジラファンからも評価されていて、先にも書いたようにシリーズランキング2014年ゴジラ総選挙で1位になった程です。しかし、残念ながら興行成績が前作ゴジラ(1984)を下回ってしまったため、次回からは大人向けのドラマや新怪獣登場ではなく、エンターテイメント性を重視したファミリー向け娯楽路線やキングギドラやモスラといった人気怪獣再登場へと方針が変更されるようになってしまったなったそうです。
それでも当時小学5年生頃だった自分は、VSビオランテはそれまでのシリーズと比べて格段に面白いと思っていましたけどねw
初代ゴジラなどのようにストーリーやテーマがしっかりしている奥の深い作品は、子供でもちょっと背伸びして見てみたり、ちゃんと後々にも評価される作品になると思います。その結果として2016年シン・ゴジラが大ヒットしたこともあると思います(庵野監督の手腕も大きいですが)。
2. ゴジラシリーズとして見たいところを抑えている
●リアリティの構築
VSビオランテはシン・ゴジラ程ではないですがリアリティの表現にこだわっています(そもそもシン・ゴジラと比較するのは酷なのですがw 比較しているのはこの感想記事は「シン・ゴジラを見てからのゴジラシリーズ」が主旨のため)。
まず、昭和中期以降の子供向け路線とは違い、ゴジラとビオランテの対決といった怪獣プロレスよりも「ゴジラ対自衛隊」に軸足を置いています。そして、ゴジラ(「G」と呼称)は「特殊災害」と規定され、4段階の警戒態勢が設けられリアリティを出しているのです。
▲ゴジラによる放射能汚染もちゃんと描かれています。
▲もちろんエキストラによる避難シーンもあります。
●ゴジラが強い
シン・ゴジラのゴジラも強かったのですが、こちらのゴジラも強いのです。ただ、こちらは映画のセリフをちゃんと聞いていないと分かりづらいのですが。
まず、機動兵器スーパーX2の目玉「ファイアミラー」はゴジラの熱線を1万倍にして跳ね返して攻撃するのです。あのゴジラの熱線を1万倍にして攻撃ですよ?w
▲ゴジラの熱線をなんと1万倍の威力にして反射!
そして自衛隊の攻撃はもちろん、ゴジラの体内の源の核を食べる抗核バクテリアで攻撃。さらにサンダーコントロールシステムで攻撃でゴジラの体温を戦車1台分溶かす熱まで上昇までさせます。
それでもゴジラは自衛隊と戦い、ビオランテとも戦っていくので、いかにゴジラが強いのかが分かると思います。しかも今作のゴジラはエネルギーである核を一度も摂取しないにも関わらず、です。
●対自衛隊、対スーパーX2、対ビオランテのバランスが良い
まず、対自衛隊がよくできています。
実際の自衛隊でのロケや演習での撮影を行いリアリティを出しています(後のシリーズではここまでの自衛隊協力はできなかったとオーディオコメンタリーで語られています)。
また、今作ではゴジラへの分析、戦略を考え、シミュレーションゲームのようにゴジラを追い詰めているところが面白いんです。
そして何より「自衛隊(人間)」が戦う様はリアリティを感じられます。加え、「自衛隊」という呼称もリアリティのひとつのポイントであるとも思います(次回作からは「自衛隊」ではなく「Gフォース」となりますから)。
■対スーパーX2
男の子が大好き、特撮作品お決まりの超兵器が登場します。完全リアリティではないのですが、作品内の世界観としては許容範囲です。そもそも今作は前作1984年版の続きの作品で、前作登場したスーパーXの後継機として登場することになるわけなので。
■対ビオランテ
ゴジラ細胞から作られたゴジラの分身ともいえるビオランテ。自分の分身との戦いは燃える要素の一つです。第一形態の薔薇型の花獣形態では、その怪しい美しさの姿のフォルム、第二形態の植獣形態では、ゴジラに似た動物系のフォルムに進化、ゴジラよりも一回りも大きくなっているのです。そんな相手にゴジラがどう戦うのか見応えがあります。
▲ゴジラとの大きさを比べて見てください
●ゴジラといえばやっぱりゴジラのテーマと市街破壊シーン
ゴジラといえばやっぱり市街地の破壊シーンです。
当たり前と言えば当たり前なんですが、その破壊シーンに伊福部昭先生のゴジラのテーマが合わさってこそ「ゴジラ」というのがやっぱりあるんですよね。
前作1984版にはゴジラのテーマがかからないですし、VSビオランテでは中盤になって忘れた頃にこのシーンが登場するのがまた良いんですw(ちなみにシン・ゴジラも同様)。新しいゴジラを見つつも「ああ、やっぱりゴジラはこれだよねw」という気持ちになるのですw
これらしっかり「ゴジラ作品」のツボを抑えているわけです。
▲そういえばシン・ゴジラにも似たような構図がありましたよね
3. 純粋に映画として面白い
◇2で挙げたゴジラ作品としての継承部分もありつつ、純粋に映画としてテーマがしっかりあり、ストーリーやテンポが良く進んでバランスやまとまりもあると感じます。
●ストーリーの軸
自己再生能力を持った核を超える兵器となりうるゴジラ細胞を巡って、各国家が情報戦やテロ攻撃を繰り広げていきます。
▲アメリカを始め、他の国もゴジラ細胞を狙います。
●キャラクター
▲主人公の筑波生命工学研究所の若きエース桐島(三田村邦彦さん)、ヒロインの大河内財団の娘の明日香(田中好子さん)との恋愛模様。
▲若きエリート防衛庁特殊戦略作戦室室長、黒木特佐(高嶋政伸さん)。
対ゴジラへのスーパーX2の運用ならびに陸・海・空・全自衛隊の指揮を執り、上官とぶつかりながらも柔軟かつ手段を選ばない大胆な戦術・戦略任務を遂行していきます。彼や自衛隊のゴジラへの戦術がシミュレーションゲームのようでもあり見ていて面白いのです。
▲精神開発センターに所属する少女、三枝未希(小高恵美さん)。
超能力(テレパシー系)を持ってゴジラと向き合います。なお次回以降のゴジラシリーズではレギュラー出演となります。
▲陸上自衛隊の権藤一佐(峰岸徹さん)。
随所でシニカルな発言が面白く、対ゴジラでは功績を残します。あの「薬は注射より飲むのに限るぜ、ゴジラさん」など名言もw
▲サラジアの工作員、SSS9(コードネーム)。
B級色で笑えますw というのも、実際に監督が外国人俳優の通訳として収録現場に来ていたところを工作員役として採用したとのことなのですw この辺りはオーディオコメンタリーでも言っており、「外国人キャストはもう少しキチンとキャスティングすればよかった」と語っているのですw 自分はこれはこれで良い味出してると思う部分もありますが、確かにもうちょっとなんとかなればともw
4. 音楽はドラクエのすぎやまこういち先生。もちろんゴジラのテーマや名曲も使用。
メロディアスでキャッチーでもあり、場面にあった新しいゴジラ音楽が流れます。ゴジラのテーマのロックアレンジもあったりします。
これは個人的な好みにもなりますが、ドラクエで育った自分としてはすぎやま音楽がすごく心地良くて今作に合っていると感じます。
ちなみにVSビオランテ公開は1989年12月。ファミコンのドラクエ4発売はわずか3ヶ月後の1990年2月。制作期間が被っているのか、ドラクエ4の馬車のマーチに酷似しているものもありますw 他にもドラクエに使われても違和感無いような音楽もあるのでご自分で確かめてみてくださいw
そしてそれだけでなく、伊福部昭先生のゴジラのテーマや怪獣大戦争マーチ(自衛隊のテーマ。シン・ゴジラでも使用)もちゃんと用意されているのです。先にも挙げたように、ゴジラ出現やゴジラの市街破壊シーンではちゃんとそれらの音楽が使われるのが良いんですよね。
5. ゴジラやビオランテ、特撮技術の魅力や向上
●ゴジラ
ビジュアルが新しくなり、白目が少なく、より動物的なリアリティあるものになりました。ビオゴジはイケメンという言葉があるほどですw ゴジラの造形、歯も原案の小林晋一郎さんが歯科医師、歯学者とのこともあり、意見として歯が二重歯列になっているとのことです。
ゴジラの動きも昭和シリーズの人間的なコミカルな動きではありません。スーツアクターの薩摩剣八郎さんによる腕を円に描くような独特の動きが、人間でも動物でもなく、ゴジラ独特の動きを作り出していきます。平成ゴジラシリーズはこの方が“ゴジラのなかみ”なのです。
●ビオランテ
ゴジラの細胞によって生み出されたいわばゴジラの分身。
進化をしての再度対決も燃える要素です。造形もカッコよいです。これまでの造形技術と比べると格段にリアリティを感じられます。なお、ビオランテはキングギドラを上回るピアノ線32本、スタッフは20人も使って動かしていたそうです。
▲劇場ポスター。キャッチコピー「超ゴジラ」。このポスター、超カッコイイです! タイトルロゴもそうですし、この当時でこのセンスは素晴らしい!
●特撮技術の向上
特撮技術は、川北紘一さんがメインの特撮監督として行うようになりました。川北紘一さんはこれまで東宝特撮でされていた方ですが、このVSビオランテからVSデストロイアまでは特撮監督して行っています。
「怪獣はプロレスごっこのような肉弾戦をしないだろう」という考えから、怪獣同士が取っ組み合うような格闘演出を排除し、目や口、触覚などからの光線技の応酬を多用。このため「川北特撮=光線の打ち合い」などと揶揄する向きもある。しかし、格闘比重が希薄である反面、格闘戦に入ると「敵怪獣の喉笛を噛み切ろうと狙う」「足に自重をかけて圧殺しようとする」「背後から襲撃して目玉を狙う」「ゴジラの掌をビオランテの触手が突き破る」など、かなり生々しいバトルも描き込んでおり、擬人化した動きは意図的に排除している。
引用:wikipedia
▲まさに「ゴジラの掌をビオランテの触手が突き破る」図。
個人的にも怪獣が肉弾戦ばかりしていても、どうしても中の人間の動きが垣間見えてしまったり、着ぐるみ感や動きが安っぽく見えてしまうので、この考えは良かったと思います。
総括。個人的に一番の傑作です!
以上、5つがVSビオランテを面白く感じる理由になります。
VSビオランテは、テーマも初代に通じる部分やこれまでのシリーズの良さを踏襲しつつも、新しさに挑んでいる作品です。上記5つのポイントを意識して見てみると面白い作品と感じるのではないかと思います。なお1984版の続きの作品なのでそちらも見たほうがより楽しめると思います。
それでも敢えて残念・疑問な点を挙げます。(注・ネタバレあり)
重箱の隅をつつくようですし、好きなので許せちゃうレベルですがw
●東京でいきなりドンパチ銃撃戦されるのはリアリティに欠ける
●それでもやっぱり外国人俳優のキャスティングが安いw
●スーパーX2の無人リモコン操作が当時のあの技術力では非現実的すぎるw
●白神博士が元凶なのに他人事のような言動ばかり取るw
(マッドサイエンティストとしてそれを狙ってるのかどうか不明w)
●関西空港建設地で明日香が自衛隊を説得して二人で残るシーン、ゴジラを前に二人だけ生身の人間を残すのは非現実・人道的で、力を信じるどうこうのレベルではないw
●権藤一佐らが抗核バクテリアのミサイルを打ち込む作戦、生身で立ち向かうのはあまりにリスク高すぎじゃないでしょうかw 何かしらメカに乗り込んで撃ったりした方がまだ安全だと思いますw
(ストーリーとしてもそこまで準備する時間がなかったと解釈していますw)
●ゴジラとビオランテの最後の対決が短い、意外とあっけない
→これはオーディオコメンタリーで話しているのですが、ビオランテのデザインが仕上がってくるのが遅かったため制作期間が取れなかったのこと。もし時間があればラストバトルはもっと変わったものになったかもしれないと川北監督は言っています
●中盤バイオメジャーのトラックが横転してその彼は即死してるのに、ラストで桐島とSSS9が車で崖から落ちても全くの無傷w
●言わずもがな、ラストの沢口靖子さんの顔はいらないでしょうw
●ラストでSSS9をTCSで殺したあとや、白神博士も死んでしまいますが、人が死んだあとにも関わらず主人公とヒロインが何事もなかったような笑顔でのやり取り
→爽やかな未来へ繋げるラストという狙いもあって、悲壮感あるようにしなかったのかなと思いますがw
余談。2014年ゴジラ生誕60周年イベント、ビオランテ上映に行ってきた
そういえば2014年、ゴジラ生誕60周年イベントでの全作品劇場公開時にVSビオランテを見に行ってきました。実はVSビオランテは劇場で見たことなかったので、是非一度は劇場で見てみたかったのです。
▲大森一樹監督とプロデューサーの富山省吾さんの対談もあり。
対談の内容はもうほとんど覚えていないのですが、監督が自衛隊ロケで艦船に乗る際に遅刻してしまって自衛隊に怒られるかと思ったら、それでも自衛隊の方々が敬礼をして待ってくれていた、というようなエピソードがありました。
▲握手会の様子
自分が監督と握手した際に「VSビオランテが好きで、劇場で見たことなかったので見たかったんです」と伝えたのですが、どうやら監督としては次作のVSキングギドラの方に愛着があるようで、あまりVSビオランテの反応は良くなかった様子でした^^;(VSビオランテ上映後の握手会なのにw)。
まあ、VSキングギドラはご自分で脚本全てされて思い入れがあるからなんでしょうかね…。そういえばVSビオランテの対談でもVSキングギドラの話もあった記憶がありますしw
▲プロデューサーの富山省吾さん。
▲お二方に頂いたサインです。